糖尿病は単なる血糖異常の病気ではなく、全身の微小血管・大血管障害を引き起こす慢性疾患です。その中でも特に注意が必要なのが、糖尿病性腎症です。近年、透析導入原因の第1位であり、腎症の進行を防ぐためには「尿たんぱく」に早期から注目した診療が不可欠です。
八女市黒木町で診療を行っている当院では、糖尿病患者さんにおける腎機能評価と腎保護の視点を持った治療介入を積極的に行っています。
★尿たんぱくは「沈黙のシグナル」
糖尿病性腎症の初期段階では、eGFR(糸球体濾過量)は保たれていても、尿中アルブミンの排泄(UACR)が上昇し始めます。この段階での介入が、将来の腎機能低下や透析導入を回避するカギとなります。また腎機能の低下が心臓や血管のリスクになる事も分かってきており、血管の病気を防ぐ意味でも腎臓を守る事が重要と思われます。
★腎保護に注目される新たな治療選択肢
以下の薬剤群は、近年の大規模臨床試験で糖尿病性腎症の進行抑制や心血管イベントのリスク低減が示されており、診療の中核に据えるべき治療と考えています。
■ SGLT2阻害薬(例:ダパグリフロジン、エンパグリフロジン)
腎近位尿細管におけるSGLT2を阻害し、尿糖排泄を促進
糖尿病性腎症における糸球体内圧の低下、蛋白尿の減少、腎機能低下の抑制
DAPA-CKD試験、EMPEROR試験等により腎・心両面のアウトカム改善が証明されています
■ MRA(選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬:例 ケレンディア)
糖尿病性腎症では、アルドステロンによる腎線維化が進行要因となります
フィネレノンは、従来のスピロノラクトンやエプレレノンと比べて高カリウム血症のリスクが低く、腎保護作用が期待できる新規薬剤です
FIDELIO-DKD試験で、腎機能悪化や腎イベントのリスクを有意に低下
■ GLP-1受容体作動薬(例:セマグルチド、デュラグルチド)
血糖コントロールに加え、体重減少、血圧改善、抗炎症作用など多面的な作用
LEADER試験、REWIND試験などで心血管イベントの抑制およびアルブミン尿の改善効果が報告されています
SGLT2阻害薬との併用によるシナジー効果も期待
★当院での方針:腎臓を守る糖尿病診療
当院では、糖尿病患者さんに対して以下の点を重視しています:
●UACR(尿アルブミン/クレアチニン比)やeGFRの定期的評価
●早期からの腎保護薬の導入(必要に応じて併用療法)
●高血圧・脂質異常・肥満の包括的マネジメント
●生活指導と薬物療法の両立
糖尿病治療の目的は「血糖値を下げること」ではなく、合併症を防ぎ、長期的なQOLを守ることです。
そのためには、腎機能という“沈黙の臓器”にいかに早く気づくかが大事です。
下記は糖尿病と神経障害についての内容です。併せてご覧ください。
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