お子様が突然高熱を出し、胸や喉から「ゼコゼコ」「ヒューヒュー」という音が聞こえると、保護者の皆様はとても心配されることと思います。
特に、「高熱が何日も続いていて、ゼコゼコ(喘鳴:ぜんめい)が強い」という場合に疑われる代表的な原因ウイルスとして、「RSウイルス」と「ヒトメタニューモウイルス(hMPV)」の2つがあります。
今回は、この2つのウイルスの特徴や違い、治療法、そして病院を受診・入院を検討すべき重要なサインについて詳しく解説します。
高熱とゼコゼコを引き起こす2大ウイルス
RSウイルスとヒトメタニューモウイルス(hMPV)は、どちらも呼吸器(鼻、喉、気管支、肺など)に感染して強い炎症を起こすウイルスです。特に細気管支(気管支の奥の細い枝分かれ部分)に炎症が及ぶと、空気の通り道が狭くなり、呼吸をするたびに「ゼコゼコ」「ヒューヒュー」という音が出るようになります。
1. RSウイルス感染症とは?
RSウイルスは、非常に感染力が強く、「2歳までにほぼ100%のお子様が一度は感染する」と言われている非常にポピュラーなウイルスです。
- かかりやすい年齢: 生後数ヶ月の乳幼児〜1・2歳頃(特に生後6ヶ月未満の赤ちゃんは重症化しやすいため注意が必要です)。
- 主な症状: 発熱、鼻水、咳から始まり、数日かけて咳が悪化したり「ゼコゼコ」という呼吸(細気管支炎・肺炎)に移行します。
- 流行時期: 以前は冬場が中心でしたが、近年は夏から秋にかけての流行も多く見られます。
2. ヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症とは?
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は、2001年に発見された比較的新しいウイルスです。症状や経過がRSウイルスと非常に酷似しているのが特徴です。
- かかりやすい年齢: 1歳〜3歳頃のやや大きくなった乳幼児に多く見られます(5歳までにほとんどの人が感染を経験します)。
- 主な症状: RSウイルスと同様に、38〜39℃以上の高熱が4〜5日ほど長く続き、強い咳やゼコゼコを伴います。高熱の期間がRSウイルスより少し長く続く傾向があります。
- 流行時期: 主に春から初夏(3月〜6月頃)にかけて流行しやすいとされています。
治療法について:特効薬はありません
保護者の方から「ウイルスを退治する特効薬はありませんか?」とご質問いただくことがよくありますが、残念ながらRSウイルス・hMPVのどちらにも直接ウイルスを撃退する抗ウイルス薬(特効薬)はありません。(※インフルエンザに対するタミフルのような薬はありません)
そのため、治療の基本はご自身の免疫でウイルスが消えるのを待ちながら、症状を和らげる「対症療法(たいしょうりょうほう)」となります。
- 発熱に対して:解熱剤を使用する
- 鼻づまりに対して:こまめに鼻水を吸引して呼吸を楽にする
入院が必要となる主なケース
多くのお子様は自宅療養で回復していきますが、症状が重い場合は入院して経過観察や集中ケアを行うこと(入院加療)が必要になります。
特に以下の状態が見られる場合は、自力での回復が難しく、入院の適応となります。
- しっかり呼吸ができていない(呼吸困難)
- 息をするたびに小鼻が大きく膨らむ(鼻翼呼吸)
- 息を吸う時に、喉元やあばら骨の間が凹む(陥没呼吸)
- 肩を上下させて必死に息をしている
- 顔色や唇の色が悪い(青白い、紫っぽい)
- 水分が摂れずにぐったりしている(脱水症状)
- 強い咳込みや息苦しさから、水分やミルクをほとんど飲めない
- おしっこの回数や量が極端に減っている(半日以上おしっこが出ないなど)
- 目がうつろで、呼びかけに対する反応が乏しい
入院となった場合は、酸素の吸入を行ったり、点滴で水分と栄養を補給しながら、呼吸の状態が落ち着くのを慎重に見守ります。
保護者の皆様へ:受診のタイミング
⚠️ 病院を受診してほしい重要なサイン
「高熱が数日間続いており、今までゼコゼコしたことがなかったのに、呼吸のゼコゼコ・ヒューヒューが強く出ている」
このような状況が見られた場合は、我慢させずに早めに医療機関を受診してください。
「たかが風邪」と様子を見ているうちに、夜間急に呼吸が苦しくなってしまうケースも少なくありません。特に小さなお子様ほど、症状の変化が早いことがあります。
「いつもと呼吸の様子が違う」「胸の動きがおかしい」「水分が摂れていない」と感じたら、迷わず医師にご相談ください。
冨田医院 医師 岡田一樹