健康診断や血液検査の結果を見て、「中性脂肪(トリグリセライド:TG)が高めですね」と医師から言われた経験はありませんか?
「コレステロールの薬はすぐ出されたけれど、中性脂肪が高いのは『様子を見ましょう』『食事に気をつけてね』で終わってしまった…」「薬で下げなくて本当に大丈夫なの?」と疑問や不安を感じる患者さんは少なくありません。
今回は、「中性脂肪が高いとき、なぜすぐに薬を使わないことがあるのか?」「どのような場合に薬(特にエパデールなどの高純度EPA製剤)を使うべきなのか?」について、最新の動脈硬化予防のエビデンスを交えて分かりやすく解説します。
1. なぜ「中性脂肪高値」にはすぐに薬を使わないことが多いのか?
結論から言うと、中性脂肪が「少し高い〜中等度に高い」程度の場合、まずは食事や運動などの生活習慣改善を行うことが標準的な治療原則だからです。
① 生活習慣の見直しで劇的に下がりやすい
悪玉コレステロール(LDLコレステロール)は体質や遺伝の影響も強く、食事改善だけでは下がりにくいことがあります。一方で、中性脂肪は日々の食事内容、アルコール摂取量、運動量の影響をダイレクトに受けます。
- お酒を控える(休肝日を作る、適量にする)
- 甘いものやジュース、白米・パン・麺類などの糖質を控える
- 揚げ物や脂っこい食事を減らす
- 適度な有酸素運動(ウォーキングなど)を取り入れる
これらを数ヶ月意識するだけで、検査値が 200〜300 mg/dL 程度あった方でも、薬を使わずに正常値(150 mg/dL未満)まで下がるケースが多々あります。
② 「数値を下げる=心筋梗塞が減る」とは限らない
中性脂肪を強力に下げる薬(フィブラート系薬剤など)は昔から存在します。しかし、近年行われた大規模な臨床研究(PROMINENT試験など)において、「フィブラート系の薬で中性脂肪の数値をしっかり下げても、心筋梗塞や脳梗塞などの発症リスクは減らなかった」という結果が報告されました。
つまり、単に「検査値の見た目を下げるためだけ」に薬を飲むことには、あまり大きな予防メリットがないことが分かってきたのです。
2. 薬の使い分け:フィブラート系 vs EPA製剤
では、中性脂肪の薬は全く使わないのかというと、そうではありません。「中性脂肪の数値の高さ」と「予防したい病気の目的」によって、明確に使い分けが行われます。
| 薬剤区分 | 主な目的 | 使いどころ |
|---|---|---|
| フィブラート系薬剤 (フェノフィブラート、パルモディアなど) |
急性膵炎の予防 (中性脂肪を強力に30〜50%下げる) |
中性脂肪が 500 mg/dL 以上(特に1,000 mg/dL超)の極めて高い数値のとき |
| 高純度EPA製剤 (エパデールなど) |
動脈硬化・心血管疾患の予防 (血管の炎症を抑え、血栓を防ぐ) |
中性脂肪が 150〜499 mg/dL で、高血圧や糖尿病など動脈硬化リスクが高い人 |
中性脂肪が 500 mg/dL を超えるような極端な高値になると、命に関わる「急性膵炎」を引き起こす危険が高まるため、フィブラート系薬剤などで速やかに数値を下げる必要があります。一方、それ以下の数値であれば、ターゲットは「急性膵炎」ではなく「将来の心筋梗塞や脳梗塞の予防」になります。
3. 「数値が微妙 × 動脈硬化リスクが高い」人にエパデールを使う理由
ここで重要なのが、「中性脂肪は 200〜300 mg/dL 前後と飛び抜けて高くはないが、高血圧や糖尿病がある」というようなケースです。
「残余リスク(取り切れないリスク)」へのアプローチ
動脈硬化性疾患を予防する上で最も重要なのは、悪玉コレステロール(LDL-C)を下げる「スタチン」という薬です。しかし、スタチンでLDLコレステロールをしっかり下げていても、中性脂肪が高めであったり、高血圧や糖尿病を合併している患者さんは、依然として血管事故を起こすリスク(残余リスク)が残ってしまいます。
エパデール(高純度EPA)が持つ独自の強み
エパデールは、青魚の脂に多く含まれる「EPA(イコサペント酸)」を高純度に精製した医療用医薬品です。エパデールには以下のような多面的な働きがあります。
- 抗炎症作用: 血管壁の慢性的な炎症を鎮める
- プラークの安定化: 血管の内側に溜まったコレステロールのコブ(プラーク)が破れるのを防ぐ
- 抗血小板作用: 血液をサラサラにし、血栓(血の塊)ができにくくする
- 血管内皮機能の改善: 血管をしなやかに保つ
国内外の大規模臨床試験(JELIS試験やREDUCE-IT試験など)でも、高リスクな患者さんに高純度EPAを投与することで、心筋梗塞や狭心症などの心血管イベントが有意に減少したことが証明されています。
つまり、エパデールは「単に中性脂肪の数値を下げる薬」という枠を超えて、「血管を守り、心筋梗塞や脳梗塞を予防するための薬」として非常に頼もしい選択肢となるのです。
冨田医院では、動脈硬化リスクのある人は適宜、頸動脈エコーを行い、プラークを認める場合はエパデールの導入を行っています。
4. まとめ:ご自身の「トータルリスク」に合わせた治療を
中性脂肪の数値だけを見て一喜一憂する必要はありません。大切なのは、「ご自身が持っている全体の血管リスクの中で、その中性脂肪をどう評価するか」です。
【当院での判断基準の目安】
- 中性脂肪が軽度高値で、他の持病がない方: まずはお薬を使わず、食事や運動、節酒などの生活改善からスタートします。
- 中性脂肪が 500 mg/dL 以上の極端な高値の方: 急性膵炎を防ぐため、フィブラート系薬剤などで速やかに下げます。
- 中性脂肪が 150〜499 mg/dL で、高血圧・糖尿病・喫煙歴・過去の心血管疾患などがある方: 生活習慣の改善と並行し、血管を保護するためにエパデール(EPA製剤)の内服を積極的に検討します。
「健診で中性脂肪を指摘されたけれど、放っておいていいのか分からない」「高血圧やコレステロールもあって心配」という方は、当院は八女市黒木町で診療しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。一人ひとりのライフスタイルと血管リスクに合わせた最適な治療方針をご提案いたします。
冨田医院
医師 岡田一樹