高血圧の治療でよく処方されるお薬に、「RAS阻害薬(アールエーエスそがいやく)」があります。
名前は少し難しそうですが、実はこの薬は、血圧を下げるだけでなく、心臓・脳・腎臓を守ることが分かっているとても大切なお薬です。
RAS阻害薬とは?
私たちの体には、血圧を上げるための仕組みとして 「レニン・アンジオテンシン系(RAS)」があります。
RAS阻害薬は、この仕組みが過剰に働きすぎないように調整するお薬です。
血管を無理やり広げるのではなく、
体にとって自然な形で血圧を下げるのが特徴です。
代表的なお薬には、次のようなものがあります。
- ACE阻害薬(例:エナラプリル、ペリンドプリルなど)
- ARB(例:ロサルタン、カンデサルタン、テルミサルタンなど)
なぜ高血圧にRAS阻害薬がよく使われるの?
高血圧で本当に怖いのは、血圧の数字そのものよりも、将来起こる合併症です。
- 脳卒中
- 心筋梗塞
- 心不全
- 腎臓の機能低下
RAS阻害薬は、これらの病気を減らす効果があることが、さまざまな研究で示されています。
HOPE試験とは?(とても有名な研究です)
RAS阻害薬の有効性を示した有名な研究に、HOPE試験があります。
この研究では、心臓や血管の病気を起こしやすい患者さんに、
ACE阻害薬(ラミプリル)を使用した場合の効果が調べられました。
その結果、
- 心筋梗塞が減った
- 脳卒中が減った
- 心血管病による死亡が減った
という重要な結果が得られました。
しかもこの効果は、単に血圧が下がっただけでは説明できないほどでした。
RAS阻害薬は「血圧を下げる」以上の薬
HOPE試験から分かったのは、
RAS阻害薬は、
「血圧を下げる薬」+「血管や臓器を守る薬」
という役割を持っている、ということです。
こんな方には、特にRAS阻害薬を使いたいと考えます
RAS阻害薬は、次のような方では特に大きなメリットがあります。
-
- 尿たんぱくを認める方
尿にたんぱくが出ている場合、腎臓に負担がかかっています(糸球体過剰ろ過)。
RAS阻害薬には、腎臓の中の圧を下げて尿たんぱくを減らし、腎機能の悪化を抑える作用があります。
- 尿たんぱくを認める方
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- 心筋梗塞を起こしたことがある方
心筋梗塞の後は、心臓に負担がかかり続けます。
RAS阻害薬は、心臓の形や働きの悪化(リモデリング)を抑え、再発や心不全を防ぎます。
- 心筋梗塞を起こしたことがある方
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- 心不全がある、または心不全を指摘されたことがある方
心不全では心臓に過剰な負担がかかっています。
RAS阻害薬は、症状の悪化や入院を減らし、予後を改善することが分かっています。
- 心不全がある、または心不全を指摘されたことがある方
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- 糖尿病がある方
糖尿病の方は、心臓や腎臓の病気を起こしやすくなります。
RAS阻害薬は、糖尿病性腎症の進行を抑え、心血管イベントを減らす効果があります。
- 糖尿病がある方
- 脳卒中や狭心症など、動脈硬化性疾患のリスクが高い方
RAS阻害薬は、血圧を下げるだけでなく、血管のダメージを抑えることで将来の病気を防ぎます。
副作用は大丈夫?
多くの方が安全に使用できますが、まれに
- 腎臓の数値やカリウムが上がる
- (ACE阻害薬では)空咳が出る
などが起こることがあります。
当院では、定期的な血液検査を行いながら、安全に治療を行っています。
まとめ
- RAS阻害薬は高血圧治療の中心となるお薬
- HOPE試験で、心臓・脳の病気を減らすことが証明されている
- 血圧だけでなく、将来の健康を守るためのお薬
高血圧の治療は、「今の血圧」だけでなく「これからの人生」を守る治療です。
当院は八女市黒木町で診療をしておりますので、お薬について不安や疑問があれば、いつでもご相談ください。
冨田医院:医師 岡田一樹