骨粗鬆症は骨密度の低下や骨質の劣化により骨が脆くなり、骨折を起こしやすくなる病気です。 特に女性の高齢者では、骨折がきっかけとなり寝たきりや生活機能の低下につながり死亡リスクを上昇させることも分かっており積極的な治療が必要です。
骨粗鬆症治療薬の中でも、ビスホスホネート(BP)製剤は長年にわたり多くの臨床研究が行われ、 骨折予防効果が明確に示されている薬剤です。 現在も世界中で骨粗鬆症治療の基本薬の一つとして広く使用されています。
BP製剤の作用機序
骨は「骨吸収」と「骨形成」というリモデリングを繰り返しています。 骨粗鬆症では破骨細胞による骨吸収が過剰となり、 骨量が減少して骨折しやすくなります。
BP製剤は骨に取り込まれ、 破骨細胞の働きを抑制することで骨吸収を抑える薬です。 これにより骨密度を改善させ、骨折リスクを低下させます。
大規模臨床試験では、
- 椎体骨折のリスク低下
- 大腿骨近位部骨折の減少
- 骨密度の改善
といった効果が明確に示されています。八女市黒木町で診療している当院でも積極的に採用しております。
BP製剤の「休薬(ドラッグホリデー)」とは
BP製剤は骨に長期間蓄積するという特徴があります。 そのため長期間治療を行った患者さんでは、 「休薬(ドラッグホリデー)」という考え方が議論されることがあります。
これは長期使用に関連する可能性が指摘されている
- 顎骨壊死
- 非定型大腿骨骨折
といったまれな副作用を考慮したものです。
しかしこれらの副作用は非常に頻度が低く、 骨折予防効果のメリットの方がはるかに大きい患者さんが多い と考えられています。
休薬に関する代表的研究
BP休薬に関する重要な研究として、 アレンドロネートを対象としたFLEX trialがあります。 この研究では、約5年間BP製剤を使用した後に継続群と中止群を比較しました。
その結果、薬剤を中止した群では 椎体骨折のリスクが有意に増加することが報告されています。
また、ゾレドロン酸を対象とした HORIZON extension trialでも、 治療を継続した群の方が骨密度の維持や骨折予防効果が良好であることが示されています。
これらの研究から、 骨折リスクが高い患者では安易に治療を中止すべきではない と考えられています。
休薬を慎重に考えるべき患者
以下のような患者さんでは、骨折リスクが高いため、 BP製剤の中止は慎重に検討する必要があります。
- 高齢の患者
- 既存椎体骨折がある
- 大腿骨近位部骨折の既往
- 骨密度が著しく低い
このような場合には、 骨折予防の利益を優先し、治療継続が望ましいケースが多い とされています。
重症骨粗鬆症ではPTH製剤を使用する
骨密度が著しく低く、骨折リスクが非常に高い患者さんでは、 PTH製剤(副甲状腺ホルモン製剤)を使用することがあります。
PTH製剤は骨吸収を抑える薬ではなく、 骨形成を促進する「骨形成促進薬」です。
重症骨粗鬆症ではまずPTH製剤で骨形成を促進し、 その後にBP製剤を使用することで骨密度を維持する 「後療法(sequential therapy)」 が有効とされています。
この治療戦略は多くの研究で有効性が示されており、 現在の骨粗鬆症治療では重要な考え方の一つです。
まとめ
ビスホスホネート(BP)製剤は、 骨粗鬆症治療においてエビデンスが最も豊富な薬剤の一つです。
休薬という考え方はありますが、 骨折リスクが高い患者さんでは 安易に中止すると骨折リスクが上昇する可能性があります。
また重症骨粗鬆症では、 PTH製剤による骨形成促進治療の後に BP製剤を使用することで骨密度を維持する治療戦略も重要です。
骨粗鬆症治療は患者さんの骨密度、年齢、骨折歴などを総合的に評価して決定する必要があります。 八女市黒木町で診療している当院では、公立八女総合病院内分泌代謝内科で連携して診療をしておりますので、治療について不安や疑問がある場合は、いつでもご相談ください。
冨田医院:医師 岡田一樹