ダイエットというと「まず運動を増やそう」と考える方が多いのではないでしょうか。ウォーキングやジョギング、ジムでのトレーニングなど、体重を減らすために運動を始める人は少なくありません。しかし実際には「運動を頑張っているのに体重が思ったほど減らない」と感じている人も多いのではないでしょうか。
この疑問に対して非常に興味深い説明をしている本があります。進化人類学者ハーマン・ポンツァーによる 『運動しても痩せないのはなぜか』です。この本では、人間のエネルギー消費の仕組みについて、従来の考え方とは少し異なる視点が紹介されています。
消費カロリーは単純な足し算ではない
多くの人は、医師も含めて1日の消費カロリーを次のように考えています。
- 基礎代謝(何もしなくても消費されるエネルギー)
- 運動や日常活動による消費カロリー
つまり、
基礎代謝+活動量=総消費カロリー
という単純な足し算で説明されることが多いのです。
この考え方に基づけば、運動量を増やせば増やすほど消費カロリーはどんどん増え、体重も減りやすくなるはずです。
しかしポンツァーの研究では、この考え方は必ずしも正しくない可能性が示されています。人間の体は単純にエネルギーを使い続けるわけではなく、一定の範囲にエネルギー消費を抑えようとする仕組みを持っているのです。
制約されたエネルギー消費モデル
ポンツァーはこれを「制約されたエネルギー消費モデル(Constrained Energy Expenditure Model)」と呼んでいます。
このモデルでは、運動量を増やすと最初は確かに消費カロリーは増えます。しかし長期的には体がその状況に適応し、他の部分でエネルギー消費を抑えるようになります。
例えば、次のような調整が起こる可能性があります。
- 免疫活動に使われるエネルギーの変化
- 炎症反応の調整
- ホルモン活動の変化
- 日常活動量の無意識の低下
その結果、運動量を大きく増やしても総消費カロリーはある程度の範囲に収まることがあるのです。
狩猟採集民の研究
ポンツァーはアフリカの狩猟採集民(ハッザ族)のエネルギー消費を研究しました。彼らは現代人よりもはるかに多く歩き、体を動かして生活しています。
しかし驚くことに、1日の総エネルギー消費量は欧米のデスクワーク中心の人々と大きく変わらなかったのです。
これは、人間の体が活動量の増加に対してエネルギー消費を調整する能力を持っていることを示しています。
運動だけで痩せるのが難しい理由
例えば、運動で300kcal消費したとします。単純な計算では、その分だけ体脂肪が減りそうに思えます。
しかし実際には
- 体がエネルギーを節約する
- 食欲が増える
- 日常活動量が減る
などの影響があり、運動によるカロリー消費がそのまま体重減少につながらないことが多いのです。
もちろん運動には多くの健康効果があります。
- 心血管疾患の予防
- 筋肉量の維持
- メンタルヘルスの改善
- インスリン感受性の改善
そのため運動は非常に重要ですが、体重を減らすという目的だけで考えると、運動の効果は意外と小さいことがあります。
体重を減らすために最も重要なこと
体重を減らすために最も重要なのは、やはり
摂取カロリーをコントロールすること
です。
体重は基本的に
- 摂取カロリー
- 消費カロリー
のバランスで決まります。
消費カロリーは体の仕組みによってある程度制約される可能性がありますが、摂取カロリーは食事によって大きく変えることができます。
そのため、体重管理では食事の管理が最も重要な要素となります。
糖質制限だけで痩せるという誤解
最近では糖質制限ダイエットが広く知られるようになりました。中には「糖質さえ減らせば脂質はいくら食べても太らない」といった極端な情報も見られます。
しかしこれは明らかな誤解です。
たとえ糖質を減らしていても、総摂取カロリーが消費カロリーを上回れば体重は増えます。
脂質は1gあたり9kcalと非常に高カロリーな栄養素です。脂質を多く摂取すれば、簡単に摂取カロリーは増えてしまいます。糖質制限で痩せる理由は、糖質と違いタンパク質と脂質は食後の満腹感が強く
自然と摂取カロリーが少なくなるためです。
極論を言えばダイエットにおいては何をたべても大丈夫であり、重要なのは総摂取カロリーを適切に管理することなのです。
まとめ
- 人間の消費カロリーは単純な足し算ではない
- 体はエネルギー消費を一定範囲に保とうとする
- 運動だけで体重を減らすのは難しいことがある
- 体重管理では食事管理が最も重要
運動は健康のために非常に重要であり、ここはポンツァーも強調しています。
しかし体重を減らす事においては食事のカロリーを適切にコントロールすることが何より重要です。そのうえで運動を組み合わせることが、健康的な体重管理につながります。
参考文献:ハーマン・ポンツァー『運動しても痩せないのはなぜか』