「なぜ食べてしまったんだろう」「どうして自分は続かないんだろう」。ダイエットがうまくいかない時、私たちはどうしても過去の失敗や、自分自身の「問題」にばかり目が向いてしまい、落ち込んでしまうこともよくあります。
当院の減量(肥満)外来では、過去の原因を掘り下げること以上に、あなたの「今ある強み」や「こうなりたいという未来」を最大限に活用するアプローチである『解決志向ブリーフセラピー』の要素を取り入れる事でより明るい気持ちで減量に取り組めるよう工夫しております。今回は、ポジティブに減量を進めるための鍵となる『解決志向ブリーフセラピー』の考え方についてご紹介します。
1. 解決志向ブリーフセラピーとは?
解決志向ブリーフセラピー(SFBT)とは、「問題の原因」を分析するのではなく、「解決した未来」に焦点を当てる心理療法です。
多くの治療が「過去の悪い習慣」をどう直すかに注力しますが、この手法では「どうなれば満足か?」「そのために今、何が活用できるか?」という未来志向の対話を重視します。患者さんを「問題を抱えた人」ではなく、すでに多くのリソース(資源や能力)を持っている「自分の人生の専門家」として尊重するのが基本の姿勢です。
2. ブリーフセラピーの「中心哲学」と「発想の前提」
このセラピーには、治療を進める上での揺るぎない土台(哲学)があります。
● 解決志向の中心哲学
- うまくいっているなら、変えようとするな:今の生活の中で、健康を支えている習慣が一つでもあれば、それを守り抜くことが最優先です。
- 一度でもうまくいったなら、それをまたせよ:「たまたま成功した」ことの中に、あなただけの「痩せパターン」が隠されています。それを繰り返すことが成功への近道です。
- うまくいかないなら、違うことをせよ:根性で同じことを繰り返す必要はありません。うまくいかない方法は潔く手放し、別の「解決策」を一緒に探しましょう。
● 前向きになれる「発想の前提」
- 「例外」は必ずある:「24時間365日、ずっと食べ続けている」人はいません。必ず「食べずに済んでいる時間」や「コントロールできている瞬間」があり、そこに解決の鍵があります。
- 変化は常に起こっており、避けられない:体も心も、毎日同じではありません。小さな「良い変化」に気づき、それを育てることで大きな結果に繋げます。
- 大きな問題であっても、解決への一歩は「小さなこと」から:大きな減量を成し遂げるために必要なのは、劇的な変化ではなく、明日からできる「小さな工夫」の積み重ねです。
3. 「今あるリソース」を再発見する
「ダイエットに関して、自分は何もできていない」と感じる方でも、詳しくお話を伺うと、実はうまくやれている瞬間(例外)が必ず見つかります。
- 「忙しい中でも、この日は朝食を工夫できた」
- 「イライラしたけれど、一口だけ食べて踏みとどまれた」
こうした「すでにうまくいっている部分」を、私たちは「リソース」と呼びます。新しいことをゼロから始めるのではなく、あなたの中にすでにあるリソースを見つけ出し、それを拡大していくことで、無理のない変化を促します。
4. ポジティブな変化を促す「問いかけ」
診察室では、あなたの「できる力」を引き出すために、以下のような前向きな質問を活用することがあります。
● スケーリング・クエスチョン
「理想の状態を10点とすると、今日は何点ですか?」
もし3点であれば、「0点ではなく3点も維持できているのは、あなたのどんな工夫のおかげですか?」と問いかけます。今の自分にある「力」を再確認し、あと「0.5点」上げるための小さな一歩を一緒に考えます。
● ミラクル・クエスチョン
「もし奇跡が起きて、悩みが解決したとしたら、あなたの生活はどう変わっていますか?」
この問いによって、制限の苦しみではなく、未来の喜びに基づいた具体的な行動イメージを描き出します。
5. 科学的根拠とポジティブな対話の融合
当院の減量外来では、科学的に実証された認知行動療法(CBT)をメインの軸としています。これは具体的な行動の変え方を学ぶための、非常に優れたツールです。
しかし、厳格な技法だけでは治療が苦しくなることもあります。そこに解決志向ブリーフセラピーの要素を取り入れることで、自分の強みに気づき、前向きに変化を楽しめるような治療プロセスを提供したいと考えています。
これらを適宜組み合わせることが、結果として持続可能な、より健康的な減量に繋がると考えております。
冨田医院 医師 岡田一樹