お腹の痛みや下痢、便秘が続くと、「過敏性腸症候群(IBS)」と診断されることがあります。IBSは非常に多い病気で、ストレスや生活習慣などが関係すると考えられており、命に関わることは基本的にありません。
しかし一方で、似たような症状の中に「炎症性腸疾患(IBD)」という、しっかりとした診断と治療が必要な病気が隠れていることがあります。最初はIBSと考えられていたものの、後からIBDと診断されるケースも少なくありません。
IBDには主に「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」があり、腸に慢性的な炎症が起こる病気です。
IBSとIBDの違いとは?
IBSは腸の動きや過敏性の異常による「機能性疾患」であり、内視鏡などで見ても明らかな炎症や潰瘍は認めません。一方、IBDは腸の粘膜に炎症や潰瘍が生じる「器質的疾患」です。
そのため、IBSでは命に関わることはほとんどありませんが、IBDでは適切な治療が必要となります。症状が似ているため区別が難しいこともありますが、いくつかのポイントで見分けることが可能です。
注意すべき「警告症状(レッドフラッグ)」
次のような症状がある場合は、IBSではなくIBDなどの器質的疾患が隠れている可能性があります。
- 血便(便に血が混じる)
- 原因不明の体重減少
- 発熱を伴う
- 夜間に腹痛や下痢で目が覚める
- 貧血を指摘されたことがある
- 家族にIBDの方がいる
IBSでは通常、これらの症状はみられません。特に血便や体重減少は重要なサインであり、見逃してはいけません。
IBDを疑ったときの検査
IBDの診断には内視鏡検査が重要ですがお子さんで内視鏡は気軽に出来る検査ではないため、その前段階として外来でできる検査も非常に有用です。
①腹部エコー(超音波検査)
体に負担の少ない検査で、腸の状態を外から観察することができます。炎症がある場合、腸管の壁が厚くなったり、血流が増えている様子等、クローン病や潰瘍性大腸炎に特徴的な所見があります。
特に小腸病変を伴うクローン病では、エコーが早期発見のきっかけになることもあります。痛みもなく繰り返し行えるため、非常に有用な検査です。
②便中カルプロテクチン
便の中に含まれる炎症の指標で、腸に炎症があると数値が上昇します。IBSでは通常上昇しないため、IBDとの鑑別に非常に役立ちます。
「症状はあるが内視鏡をすぐに行うべきか迷う」といった場合の判断材料としても重要で、不要な検査を避けつつ、見逃しを防ぐことができます。
③血液検査
炎症反応(CRP)や貧血の有無を確認します。IBDでは炎症反応の上昇や鉄欠乏性貧血を伴うことがあります。
IBSと診断された後も注意が必要
初期の段階では炎症性腸疾患はIBSと見分けがつきにくい時があるため、一度IBSと診断されても
例えば、
- これまでなかった血便が出てきた
- 体重が減ってきた
- 症状が徐々に強くなっている
といった場合には、改めてIBDの可能性を考える必要があります。
「様子をみてよい腹痛」と「見逃してはいけない腹痛」
慢性的な腹痛の多くはIBSですが、その中にIBDが紛れていることがあります。特に若い方では「ストレスのせい」と考えられ、適切な検査が行われないまま経過してしまうこともあります。
当院では、問診で警告症状の有無を丁寧に確認し、必要に応じて腹部エコーや便検査を行うことで、重大な病気を見逃さない診療を心がけています。
まとめ
- IBSとIBDは似ているが全く異なる病気
- 血便・体重減少・発熱などは重要な警告サイン
- 腹部エコーや便中カルプロテクチンが鑑別に有用
- 症状の変化があれば再評価が必要
- 気になる症状があれば早めの受診を
「いつもの腹痛」と思っていても、重要なサインが隠れていることがあります。当院は八女市黒木町で診療しておりますので長引く腹痛や気になる症状がある場合は、お気軽にご相談ください。